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2007/12/26

彫金家の鎚(つち)

Photo_2

 今から18年前、日展で活躍し76才で亡くなった彫金家(金工家)が使っていた「鎚」を、その奥様からいただいた。

 数年前のことだった。

 一番右の大きな金鎚は日頃から仕事で釘などを打つのに使っていたが、左側一連の7本は、つい最近になって引っ張り出してきて使い始めたものだ。それらは大きさ(重さ)が軽くて小さいものから、順に重くて大きなものまで一式が揃っていた。

 一番右の鎚は「385g」、一番左の鎚は「45g」である。

 わたしは仕事柄、鉄釘や真鍮・ステンレス・アルミの釘、五寸釘から長さ7mmくらいの短い釘、そして「虫ピン」まで打つことが多い。そんな時、全てをほとんど一番右側の大きな「鎚」を使っていた。それは鎚の面が「凸」で、平らではないのでとても使いにくかった。でも、どうして左7列にある軽い鎚を使わなかったのか。今になれば我ながら不思議である・・・・・。

 たとえば虫ピンを壁に打つのはとても難しい。打つのは誰でもできるが、虫ピンという鉄は柔らかくステンレスのように固くないので、打つ角度やタイミングを少しでも間違えると、すぐに曲がってしまう。それを曲がらないよう固い壁にまっすぐに打つのは、相当な技術を必要とする。「直径0.6~0.7mm位」の虫ピンを曲がらないように打つことの難しさを、日頃から実感していた。

 でも考えてみたら、1gの何分の1かの虫ピンを打つのに「385g」のトンカチではそもそも無理だったのだ(笑)

 いただいた45~100g位の軽いトンカチを使ったら、いとも簡単に虫ピンが壁に打てるのだった・・・(^^;)

 これらの鎚は、見事に黒光りしていて、木の柄は「作家の垢と脂」で黒光りしている。こんな鎚は今、店で買おうとしても絶対に売っていないだろう。砂鉄から作ったような純度の高い、でも一方では荒っぽい「ジャジャ馬」のように、使いこなすのが難しい鉄である。

 でも・・・「左利きの私」が、これらの鎚を握って釘を打つと、このジャジャ馬はわたしに反発して抵抗するのだった。

 最初その理由が分からなかった。

 しかし、道具を使っていた作家が「右利き」だったということに気がついたとき、その理由が分かった・・・。この「鎚は、右利きが使う」ように慣れているのだ。

 だからたぶん、「左利き」のわたしには違和感があったのだ。

 でもこれから、この鎚を私なりに使いこなし「調教」していこうと思っている。

 ツヤツヤと黒光りする柄を握ると、その作家の思いが伝わる。それは「一つの怨念」なのかもしれないが、同じ地元に育った私はそれに負けたくないと思う。

 「あなたの思いを、一個の後輩として受け継ぐから、その分、私にパワーを与えて欲しい!」

 と、そう願う・・・。

 

 ※ 鎚の画像です(^^)

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コメント

画像ですでに「打つ側を右に向けて撮影している」時点でイチロさんの左利き炸裂です(笑)。

右利きの人ならば、打つ側を右に置くはずです。

そして、「一番右の大きな金鎚」だけは打つ面の右側が、左側に比べ若干擦り減っている。
左利き特有の減り方です。

柄の部分も右用と左用は作りが違うと思われます。

イチロさんならば、どんなジャジャ馬な鎚でも「調教」し、使いこなせると思います。
何故ならばイチロさんは、人やものに対して、
 「自分の方から相手に合わせようと先に勤められる心がおありのようなので、うまくお付き合い出来、きっと大事にされるでしょう。」

>「あなたの思いを、一個の後輩として受け継ぐから、その分、
>私にパワーを与えて欲しい!」

もうパワーは与えられているかもしれませんよ(^_^)。
そうでなければ、
76才で亡くなった彫金家(金工家)が使っていた「鎚」を、その奥様からいただいたくことはなかったと思うのです。

イチロさんが大事にする方で、又使いこなせる方として、奥様に認められ・見初められて継承されたのだと思います。

うれしくて貴重な槌ですね。そして美しい継承ですにうれしく感じました。

投稿: 惠莉 | 2007/12/27 00:58

弘法 筆を選んだ

左利き用の工具 ありますか?

 Ichiro

投稿: Ichiro | 2007/12/27 08:07

◎惠莉さん
左利きと右利きの洞察、惠莉さんらしくさすがです(^^) わたしも気がつきませんでした・・・。

 確かにパワーはもらっています。本当に重いです。そして良いものはやっぱり良いって思えることが嬉しいです。

 道具ってのは、何でもそうですが、初めて手にしたときにはジャジャ馬ですよね(^^) でもそれを乗りこなすことは確かにできると思うのです。それが出来たとき、チョッピリ満足します(ハハハ) 使いこなされた道具は使った人間の個性が乗り移っていますから別な人間が使うのは大変です。

 でも、私は使いこなそうと思います。

 もう手にはほとんどしっくりなじんでいます(^^) 

◎Ichiroさん
 わたしは左利き用の工具も道具も使ったことは、これまで一度もないのですよ(^^) つまり全部右利き用の道具を左手で使います。道具に自分を合わせます。

 人間って器用なんだと思います。

 左利きはある意味で差別の対象ですが、そんなことで文句を言わないで、右利き用の道具を使いこなすことでより一層自分を磨けるんですネ。

 前向きであることの大切さを思います。

 

投稿: イチロ | 2007/12/27 17:39

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