« 職場に来た「タマゴ」達・・・ | トップページ | 妹よ »

2007/12/19

案山子

Photo
 夕方、疲れて帰った。
 部屋のドアを開けた瞬間、電話が鳴った。
 暗い中、受話器を取る。

 学校に行っている次男からだった。

 「父ちゃん?」
 「ああ、どうした?」
 「入院した」
 「えっ?」
 「バイト先で倒れてそのまま入院した」
 「えっ、スケボで骨折したか? 今病院からか?」
 「いや、1日でもう退院したけど、まだ通院してる」
 「なんで?」
 「過労だってさ・・・体がだるい」
 「過労って?」
 「パソコンの修理代を稼ぐために働いていた」
 「・・・・・・・・・・・・」

 受話器からは、咳がコンコンと聞こえてくる。

 「咳してるじゃないか。風邪ひいているのか」
 「分かんない・・・」
 「ちゃんとメシは食っているのか?」
 「ああ・・・(コンコン)」
 「今日の夕飯は?」
 「食ってない」
 「毎日ちゃんと食べてる?」
 「たぶん・・・」

 「じゃあまた後で電話する。ゆっくり休めよ・・・」
 「ああ」
 「とにかく、はやく帰って来いよ」
 「通院があるから、しばらくは無理だよ」
 「また電話するから・・・」


 その後、私はようやく気がついた・・・

 実は一月前の11月、電話があったのだった。その時すでにパソコンが壊れたということは聞いていたのだった。しかしその月、私は資金繰りというか、お金のやりくりが難しくて「送ってやりたいけど、今月から厳しいんだ。バイトとかで自分で何とかなるか?」と聞くと、「・・・・・ああ、何とかする。心配ない・・・」と彼は言った。「生活費は?」と聞くと、「何とかなるよ・・・」と彼は言った。

 その言葉に、親の私は易々と甘え、それからの仕送りを滞らせてしまった・・・。

 元々よほどのことがない限り、電話なんて安易にしてくるヤツではないのに・・・

 その時、気付かなくてはいけなかったのだ・・・・・・

 普段しばしば弱音を吐いたり電話で仕送りを安易に頼んでくるような子ではないのに、親の現状を分かりながらもなお電話をしてきたことの意味さえにも気がつかないほど、私は鈍感にも甘えていた。

 どうして、控えめな彼が電話してきたことの意味を、その時即座に気付いてあげられなかったのだろう。

 繰り返しになるが、その時私は迂闊にも電話口で言ってしまった。

 「年末で大変でさ、今月の仕送りの分は帰省してからなんとかするからバイトか何かで、なんとか頼む!」と・・・・・・。彼にすれば父親からそういわれればいくら苦しくても「ああ・・・良いよ・・・」としか言いようがなかったのだ・・・・・・・・。

  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 そして今日夕方の電話の後、夕飯を作りながら「あいつにもこんな牛丼を食わしてやりたいよな・・・」って思いながら夕飯を終わって、パソコンを見なが夕方のことを思い出していた時、ようやくわたしは気がついたのだ。

 「あいつは、過労で入院するまでお金がなくても頑張っていたんだ」って・・・・。

 なぜか突然、自分が情けなくて涙が流れて止まらなくなった。なんでオレはいつもこんなに鈍いんだろう。

 あいつがこんなことになったのは、お金ないから助けてくれっていう意味で電話してきたのに、親から「資金繰り」が苦しいって言われたら、それ以上何も言えなかったんだって! あいつはそんな性格の人間だって分かっていながら、その時どうして気付いてやれなかったのかって・・・。

 ホントに、今でも自分の情けない体たらくを思うと、深夜の今でも涙が溢れる。

 その後聞いたら、白いごはんだけしか食べてバイトしていたのだという。いくら若くても倒れて当然だ。そんな息子に食費位の仕送りさえもできず、今頃になって気がついているオレは、親として「失格」だ・・・・・・。

 いったい、オレは、何をやっているんだろう・・・・・・・・・

 一番大切なものが何かさえも分からなくなっている。

|

« 職場に来た「タマゴ」達・・・ | トップページ | 妹よ »

コメント

「元気でいるか 街には慣れたか
 友達出来たか

 寂しかないか お金はあるか
 今度いつ帰る

        中略

 手紙が無理なら 電話でもいい
 “金頼む”の一言でもいい
 お前の笑顔を待ちわびる
 おふくろ(おやじ)に聴かせてやってくれ

        中略

 お前も都会の雪景色の中で
 丁度 あの案山子のように
 寂しい思いをしてはいないか
 体をこわしてはいないか

        中略

 寂しかないか お金はあるか
 今度いつ帰る」

              さだまさし 「案山子」

 
>元々よほどのことがない限り、電話なんて安易にしてくるヤツではないのに・・・

息子さんが、そういうお子さんだと気付いているイチロさんは、
一番大切なものが何かを「今」分かっているはずです。

父親を気遣う息子さん。
息子さんを心底思い泣くイチロさん。
お二人とも素晴らしい親子だと思います。

ご自分を責めないで下さいね。
ご自分を責めたら愛のある息子さんが悲しみますよ。

投稿: 惠莉 | 2007/12/20 00:35

}一番大切なものが何かさえも分からなくなっている。

そんなもん 金がなければPCなんて直すな!
って事だ。

と 縞の着物に黒襟の付いた半纏を着て
  火鉢の前でキセルを持った姐さんが言っています。

しかしまぁ 倒れる限界というのが解ったし
飯は人が食うのではなく 働きが食うというのも
解ったのだから良かったではないか。


投稿: め娘 | 2007/12/20 06:17

◎惠莉さん
「案山子」

あのタイトルだけで良く分かりましたね(^^)

http://www.youtube.com/watch?v=w5Qe-3E4wlM

年をとると、涙もろくなって困ります(^^;)
今日、なけなしの金を工面して郵便局に行きました。

ご心配ありがとう。

◎め娘
>そんなもん 金がなければPCなんて直すな!
>って事だ。

学部がそっち方面なので、メシよりPCの方が大事なんだよ(^^;) 昔の作家にとっての「万年筆」みたいなものらしい・・・。

まあ、親ばか話である(笑)

投稿: イチロ | 2007/12/20 23:19

上記のURLで、素晴らしい画像と共に「案山子(かかし)」を聴かせて頂くことが出来ました。
感動して涙が出そうになってしまいました。

やはり私も涙もろくなりました。

思いが深くなる歳の積み重ねの涙は、本当は美しいのかもしれない。

 タイトルだけで分かったのは、
◆本文に案山子の文字が一文字もない。
◆息子さんがお金で困って過労で入院された。
◆私が さだまさしさん を好きだった。
 なので、歌詞の内容を覚えていたので本文と一致したからです。

 他にも好きな曲は、
◆精霊流し(しょうりょうながし)
◆無縁坂 (むえんざか)

 などなどがあります。

>ご心配ありがとう。

いいえ、とんでもございません。
イチロさんの息子さんへの思いに深い愛を感じたからです。

投稿: 惠莉 | 2007/12/21 00:45

◆精霊流し

http://jp.youtube.com/watch?v=SyNbmulew9g&feature=related

◆無縁坂

http://jp.youtube.com/watch?v=1P0hNyXZNQE&NR=1

投稿: 惠莉:追記 | 2007/12/21 01:18

人様の家庭のことだけど
健康についてなどは あと お小遣いのことは
親父は 堂々と鈍感でいて いい気もする

母親との分業ができるのなら それがいいな

投稿: 九龍公 | 2007/12/21 08:52

私の理想の父親像は、

こどもの日常の細かなことは我関せず状態でいても
命にかかわる出来事や、ヒトの尊厳に関係する事には
全力で関わってくれる人です。

今回のできごとで、息子さん
物事の「優先順位」を学ばれたかもしれませんね。


投稿: YOUME | 2007/12/22 07:12

◎惠莉さん
わたしもさだまさしさんは好きですが、最近ちょっと営業が過ぎているようで純粋さがぼやけてきてちょっと心配です。サイト案内ありがとうございましたさっそく聞きました(^^)

◎九龍公さん・YOUMEさん
一緒にご返事をさせていただきますね(^^)

それは理想かとは思いますが、今の家庭は、わたしのようにほとんどの夕食を父親が作る家庭もあれば、母親がキャリアウーマンで、父親が子どもをはぐくむ家庭もありますネ。

投稿: イチロ | 2007/12/22 12:57

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« 職場に来た「タマゴ」達・・・ | トップページ | 妹よ »